角地や二方路線に所在する土地を分筆して取得した場合の相続税評価

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被相続人が青空駐車場として使用していた角地にある土地を下図のように分筆して、長男Aと次男Bが取得することになりました。
分筆した土地はどちらも建物を建てるのに十分な広さです。

1. 角地や二方路線に所在する土地を分筆して取得した場合の評価方法の概要

原則として、土地は利用単位ごとに1画地として評価します。
しかし、被相続人が土地を1利用単位として使用していたとしても、1画地の土地を分筆して異なる者がそれぞれ分割取得した場合、取得した土地ごとに評価することとなります。

本設例の土地は、もともと全体を青空駐車場として利用していたため、全体を1画地で評価します。
また、角地であるため、側方路線影響加算率の影響が地積全体に及びます。

しかし、分筆して異なる相続人ごとに取得する場合、側方路線影響加算は長男Aが取得する甲土地の評価のときのみ考慮し、次男Bが取得する乙土地は前面路線(200D)のみにしか接していないということになります。よって、全体を1画地で評価するよりも評価額は低くなります。

ただし、遺産分割協議の結果、不動産の分割が著しく不合理であると認められる場合には、その土地は取得者単位で評価するのではなく、分割前の画地を「1画地の宅地」として評価します(評基通7-2(1)(注))。 

2. 不合理分割について

2-1. 不合理分割とは

不合理分割とは、例えば、以下の1から4に掲げるような分割内容となるときの状態における分割をいいます。

  1. 分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないとき(無道路地・帯状地・過剰な不整形地など)
  2. 分割後の画地が宅地として、標準的な宅地の地積を有さず、著しく狭くなってしまうとき
  3. 故意に土地の価値を下げるような分筆を行い、土地の評価額を下げて、相続税負担を意図的に大きく軽減させようとしているとき
  4. 現在及び将来において、有効な土地利用ができないとき

不合理分割に該当する場合、相続人ごとに取得した土地ごとに評価を行うと、無道路地としての補正や奥行きが短小であることによる補正により、過剰な評価減を行うことになってしまい、実態に則した評価がされないこととなります。

このように故意かつ不当な評価減による租税回避を防止するため、不合理分割があった場合の土地の価額は、取得者単位で個々に評価するのではなく、その分割前の画地を一画地の土地として評価します。

分割したことによって、著しく評価を下げることになったとしても、その地域の標準的な面積を有しており、土地の有効利用が可能である場合、その分割に妥当性があると認められますので、不合理分割には該当しません。

2-2. 不合理分割が適用されるとき

不合理分割が適用されるのは、不動産を贈与や相続で承継するときです。売買のときは基本的に想定されていません。その理由としては、以下のようなものが考えられます。

  1. 売買のときの時価は一般的に(財産評価基本通達ではなく)公示価格に基づく価額で売買する
  2. 売買は(相続や贈与と異なり)対価を支払って不動産の受け渡しをするため、分割によって経済的価値が低くなった土地に対価を支払うということは想定していない

また、不合理分割の適用を受けるのは、宅地の一部を通常利用できないような不合理な形状に分筆してから贈与を受け、その後、相続が発生したときに残地を承継するような場合が考えられます。

なお、不合理分割であると認められる場合に相続税評価額を計算するときは、不合理分割「前」の土地を一画地として評価します。これは同族会社間や利害関係者間などで不合理分割が行われた場合にも準用されます。

2-3. 不合理分割の例

2-4. 分筆後の土地の地積が狭小だと指摘されないためのポイント

建築物の最低敷地面積は、市町村役場の都市計画課等で調査をすることができますので、遺産分割するときは、必ずその地域における最低敷地面積を確認したうえで分筆を考えましょう。少しでも不合理分割であると指摘されるリスクを、低減することができます。

もっとも、宅地の有効利用の観点から不合理分割だと指摘される可能性は別にあることを申し添えます。

2-5. 不合理分割に該当した場合の計算方法

不合理分割「前」の土地を1画地の土地として評価した価額に、分割「後」の土地をそれぞれ別々に評価した価額の合計額に占める各土地の価額の割合を乗じて、各土地の評価額を計算します。

2-6. 不合理分割が適用される土地

評価対象地の分割後の画地が不合理分割に該当するために分割前の土地を1画地として評価する方法は、その評価対象地の地目が以下のいずれかに該当するときに適用されます。

  1. 宅地
  2. 田及び畑(宅地比準方式により評価する市街地周辺農地及び市街地農地並びに生産緑地のみ)
  3. 山林(宅地比準方式により評価する市街地山林)
  4. 原野(宅地比準方式により評価する市街地原野)
  5. 雑種地(市街化調整区域以外の都市計画区域で市街地的形態を形成する地域において、宅地比準方式によって評価する雑種地)

3. 角地や二方路線に所在する土地を分筆して取得した土地の評価にあたっての留意点

3-1. 相続税の申告期限までに分筆登記を完了しておくこと

本設例のように、土地を分筆してそれぞれの土地を異なる相続人が取得して、分筆後の土地ごとに評価を行うためには、相続税の申告期限(相続開始後10ヶ月以内)までに分筆しなければなりません。

また、以下の1と2に掲げる事項を事前に済ませておく必要があります。
以下の1や2に掲げる合意と分筆登記手続きがすべて完了するまでに要する時間を、専門家との協議のうえで試算し、相続税の申告期限までに分筆登記を完了できるかどうか、あらかじめ検討をしておく必要があります。なお、分筆登記は不動産名義が被相続人のままでも可能です。

  1. 分筆をすることについて、相続人全員の合意が必要となります。
  2. 分筆する土地に接している土地の所有者と、筆界確認を行う必要が生じます。(土地の境界について近隣の方とトラブルになってしまった場合、相続税の申告期限に間に合わなくなる恐れがあります)

3-2. 共有物分割をする方法も検討する

分筆して長男Aと次男Bがそれぞれ取得するためには、いったん共有で取得し、相続税の申告をした後に共有物分割をする方法もあります。

上記の筆界確認に時間がかかりそうな場合、相続税は共有で相続し、その後、分筆できたタイミングで共有状態を解消する方法です。

ただし、この方法は分筆前の土地全体を一つの評価単位として評価するため、分筆後の土地を個別に評価することはできません。分筆して取得することに主眼を置く場合に用いる方法です。

なお、いったん共有で相続して相続税申告期限後に共有物分割をする方が、全体として相続税評価額が低くなることもあります(例えば、広大地評価の適用)。よって、分筆して相続しようと考える場合は専門家と十分に検討してから判断することが重要です。

4. 説例の評価計算

土地甲と土地乙は不合理分割には該当せず、土地甲と土地乙は一体評価する必要はありません。土地甲と土地乙はそれぞれの自用地評価額(土地甲:4,090万円、土地乙:4,000万円)が相続税評価額となります。

一体評価であれば、正面路線と側方路線の金額が地積全体に影響を及ぼすため評価額が8,180万円となります。

これに対して、個別評価であれば、角地にあたる土地甲のみ側方路線の影響を受け、土地乙については正面路線のみ影響を受けることとなります。土地甲と土地乙の個別に評価した価額の合計額は8,090万円であるため、一体評価するよりも評価額が低くなります。

(参考)正面路線と裏面路線に接している土地の分割取得の場合
下図のように、土地が正面路線と裏面路線に接しており、前面の土地も裏面の土地も十分に有効活用できる地積である場合も、本設例のように、取得者ごとに個別に土地の評価をします。

前面の土地と裏面の土地とを別々に評価することで、どちらの土地も正面路線にのみ接する土地となるので、二方路線影響加算率を考慮する必要がありません。

結果的に一体評価するよりも評価額は低くなります。

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