空室がある賃貸アパート敷地の評価(一時的な空室の定義)

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相続開始時点において、被相続人の所有する賃貸アパートの一室が空室となっており、空室期間3ヶ月経過後に新たに賃貸借契約が締結されました。

1. 空室がある賃貸アパート敷地の評価にあたっての留意点

賃貸アパート等の一部に空室がある場合の一時的な空室である部分が、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」場合には、実際に賃貸されているものとみなして貸家及び貸家建付地の評価をすることが可能です(質疑応答事例より)。

1-1. 空室があっても評価減できる理由

貸家や貸家建付地として評価減ができる理由は、賃貸人にも借家権という一定の権利が発生しており、貸主が売却・建替え等を実施する際に、自由には処分できない点が挙げられます。

このため、例えば戸建賃貸物件一棟、又は賃貸アパートの全室が課税時期において空き家となっているようなケースでは、一時的に賃貸されていなかったかどうかは、関係なく自用地評価となります。これは、戸建一棟又は賃貸アパート一棟が全部空き家であったのであれば、土地及び建物所有者に対しては、その利用や運用に関してなんらの制限も加わらないためです。

そして、相続税法第22条にいう時価とは、相続により財産を取得した日において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解されることからすれば、財産評価基本通達26に定める賃貸割合の算出上、各独立部分を有する家屋の全部又は一部が貸し付けられているかどうかについては、課税時期(相続開始日)における現況に基づいて判断するのが原則です。

しかしながら、課税時期においてたまたま一時的に空室が生じている場合もあることを考慮し、例外として、賃貸割合の算出にあたって賃貸されている各独立部分には、継続的に賃貸されており各独立部分で課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない旨を定めているのです。

1-2. 「一時的に賃貸されていなかった」の判断基準

アパート等の一部に空室がある場合の一時的な空室部分が、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」部分に該当するかどうかは、以下の各項目を総合的に勘案して判断することになります。

  1. 賃貸されている各独立部分が課税時期前から継続的に賃貸されているか
  2. 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたか
  3. 空室の期間は賃貸以外の他の用途に供されていなかったか
  4. 空室の期間が課税時期の前後(例えば1ヶ月程度であるなど)の一時的な期間か
  5. 課税時期後の賃貸が一時的なものか

しかしながら、実務上は④の「空室の期間が課税時期の前後の例えば1ヶ月程度であるなど一時的な期間か」という論点に焦点があたることが一般的です。

一時的な空室と認められる期間は「1ヶ月程度」でなければならないわけではなく、これはあくまでも例示に過ぎません。この点、国税不服審判所の裁決事例において空室期間を巡って争いが起きていますが、平成21年3月25日裁決及び平成26年4月18日裁決などでは、8ヶ月~1年半程度の空室期間のケースで納税者が敗訴しているものもあります。

例えば、空室期間が半年以上あるようなケースで評価対象地を貸家及び貸家建付地評価を行うのであれば、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」ことを証する特殊事情の説明が必要となってきます。

1-3. 新築マンションについては「一時的に賃貸されていなかった」と判断されにくい

課税時期前の直近に新築された賃貸マンションは、課税時期後おおむね1ヶ月以内に満室となったとしても、上記の①「課税時期前に継続して賃貸」された事実がないため、自用地評価となると考えられます。

2. 空室がある賃貸アパート敷地の評価算式

貸家建付地の価額 = 自用地とした場合の価額 - 自用地とした場合の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合(※)

この「賃貸割合」における「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。

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