額面のままではダメ!預かり保証金・預かり敷金の相続税評価

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額面のままではダメ!預かり保証金・預かり敷金の相続税評価

相続する遺産に、「預かり保証金」や「預かり敷金」が含まれていた場合には、現在価値を考慮する必要があります。具体的な考え方や計算方法など、詳しくご紹介していきましょう。なお、比較されることが多い「建設協力金」についても最後に触れていますので、あわせてご確認ください。

1.預かり保証金・預かり敷金の相続税評価

被相続人(死亡した人)が賃貸物件の所有者であった場合、相続の対象となる財産の中に、「預かり保証金」や「預かり敷金」が含まれる場合があります。

預かり保証金および預かり敷金は、いずれも賃貸借契約が終了したら、賃貸物件の借り手である相手方に返金しなければならない資金です。したがって、それらの資金は、相続税評価において、相続人にとっての負(マイナス)の財産となります。

なお、相続税評価を行う際、預かり保証金および預かり敷金は、全額をそのまま遺産の額に計上することはありません。保証金や敷金は基本的に無利息ですが、賃貸借契約が終了するまでは長期間に渡る場合もあるため、相応期間の実質的な経済的利益を考慮する必要があります。

1-1.実質的な経済的利益を考慮するための計算に用いる「複利原価率」とは

「複利現価率」とは、将来の経済価値を現在価値に割り戻す際に使用する係数です。例えば、10年後の500万円は、現在価値に引き直すといくらになるかを計算する際に使用します。複利現価率は、基準となる1年あたりの金利と、経過する期間(年)によって決められており、毎年、国税庁より発表されていますので、一例として下記をご参照ください。

「平成28年分の基準年利率について(法令解釈通達)」と〔参考1〕~〔参考5〕の複利表

1-2.「複利現価率」を用いた具体的な計算事例

20年後に賃貸借契約が終了する場合、2016年12月に相続した預かり保証金300万円は、実質いくらで相続税評価されるのが妥当か、計算してみましょう。

・ステップ1:2016年12月の基準年利率を確認
国税庁のホームページ(上記参照)より、「平成28年12月」の欄のうち、「長期 7年以上」の利率「0.1%」を確認します。

・ステップ2:2016年12月の「複利表」を確認
国税庁のホームページ(上記参照)の下の方にある、「〔参考3〕複利表(平成28年3・12月分)」をご覧ください。ステップ1で、基準金利が「0.1%」であったことから、「年0.1%の複利現価率」と複利表の左端にある「20年」が交差する係数は、「0.980」だと確認できます。

・ステップ3:
年0.1%の複利現価率が0.980ですので、20年後に賃貸借契約を結んでいる相手方に返金しなければならない預かり保証金300万円の現在価値は、以下のとおり算出できます。

→預かり保証金300万円×0.980=294万円(2016年12月時点の現在価値)
つまり、相続税評価の際、負(マイナス)の遺産として相続される預かり保証金の金額は、額面の300万円ではなく、294万円とするのが正解です。

ちなみに、実際の裁決にて、無利息の敷金および預かり保証金に関する債務控除額は、返還期までの通常の金利分を考慮すべきとの判断が下されています。詳しくは、国税不服審判所における2000年3月28日および2007年4月26日の裁決事例をご確認ください。
2000年3月28日の裁決事例
2007年4月26日の裁決事例

2.建設協力金は割引計算不要

建設協力金については、相続税評価の際、基本的に将来の金利を考慮して現在価値に割り引くための計算をする必要はありません。なぜなら、対象となる建物の貸し手は、借り手が負担すべき賃借料を決定する際、建設協力金を受領したことによる経済的利益を考慮していると考えられるためです。すなわち、借り手が貸し手に支払う賃借料と、無利息または低金利で貸し手に提供された建設協力金が生み出す経済的なメリットは、相殺されるという考えに基づきます。

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