相続人が重国籍の場合の相続税の納税について

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

亡くなった人の財産を受け継いだ場合、その財産には相続税が課税されます。
相続税の課税対象となる財産の範囲は、財産を受け継ぐ相続人の国籍や住所によってその範囲が変わります。
もし、相続人が日本国籍と他の国の国籍を所有している重国籍の場合、相続税の納税はどのようになるのでしょうか?相続税法に記載される国籍の判断方法や相続税の納税義務者についてご説明します。

1.相続税の納税義務者と課税財産の範囲

相続税の納税義務者の範囲は「無制限納税義務者」「制限納税義務者」「特定納税義務者」の3つに別れています。
特定納税義務者に関しては相続時精算課税制度の適用を受ける場合の納税義務者となるため、今回は割愛させていただきます。
無制限納税義務者と制限納税義務者の違いは以下の通りです。

無制限と制限の違いは課税される遺産の範囲をしましており、無制限は国内・海外どちらの財産も課税の対象となることを言います。
一方の制限は日本国内の財産のみ課税の対象となります。

わかりやすくすると上記のようになります。
このように、相続税の納税義務者と課税財産の範囲は、被相続人・相続人の住所や国籍がどうなっているかによってその範囲が異なります。

相続税の納税義務者に関しての詳細は下記サイトをご参照ください。
フローチャートで簡単!国籍・住所から相続税の納税義務者を判定 -税理士が教える相続税の知識-

2.相続税法の国籍の判断方法

相続税法は相続税の納税義務者や課税財産の範囲、相続税の計算、申告などについて定めた法律です。
そのため、国籍をどう判断するかという細かい部分まで定められていません。
国籍に関しては、国際法上の原則として、各国の国内管轄事項に従う形となります。
具体的にどういうことかというと、国籍は大きくわけて以下の2つの方法のどちらかで判断されます。

父母両血統主義とは、父または母のどちらかが自国の国籍を有している場合には、その子も自国の国籍を取得することが可能です。
一方の生地主義は、生地主義を採用している国で生まれた子は生まれた国の国籍を取得することが可能です。
日本の場合には、父母両血統主義を採用していますが、生地主義を採用している国で産まれた日本人の子の場合には、日本国籍と生まれた国、2つの国籍を所有することになります。
つまり、生地主義を採用しているアメリカで日本人夫婦が出産した場合、その子は日本国籍とアメリカ国籍を所有しているということになる訳です。

日本では、原則として重国籍を認めていません。
そのため、国籍法の第14条では一定の年齢に達するまでにどちらかの国籍を選択することを定めています。

また、上記のようなケース以外にも他の国の国籍を所有している人に認知された場合や、養子・婚姻などによって他の国の国籍を取得した場合や、帰化によって日本国籍を取得した人でもともとの国籍も所有している場合には重国籍になるケースがあります。

3.日本国籍と他の国の国籍を所有している場合

原則として重国籍を認めていない日本の相続で重国籍の問題が浮上するのはなぜでしょうか?
まず、1でご説明したように、相続税の納税義務者の「非居住納税義務者」の条件に、日本国籍の有無について記載されています。
重国籍の場合、「日本国籍も持っているし、外国国籍も持っている」という状態です。
そして、相続税法ではこの重国籍者に対しての記載はありません。
そのため、相続税法の解釈を記載した相続税法基本通達では以下のように示されています。

これは、日本国籍を持っている非居住無制限納税義務者の場合、2でご説明したように、日本国籍と他の国の国籍を所有している場合も考えられるという点を踏まえ、相続税法上では重国籍者を除くという記載が無いという点から、日本国籍と他の国の国籍の2つ以上の国籍を所有している人も非居住無制限納税義務者に含まれるという判断をするということになります。

4.国際結婚の場合には注意が必要

国際結婚の場合には、先程ご説明したように生まれてくる子どもが重国籍となる可能性があります。
重国籍の問題以外にも国際結婚の場合には相続時の注意点がいくつかあります。

(1)被相続人が日本国籍、配偶者が他の国の国籍の場合

被相続人が日本国籍の場合には、日本の相続税法が適用されます。
つまり、相続人が日本国籍の場合と同じように遺産分割など相続が進みます。
しかし、配偶者が他の国の国籍の場合には、住民票や印鑑証明など必要書類が無いことが考えられます。
そのため、手続きに手間がかかる可能性があります。

(2)被相続人が他の国の国籍、配偶者が日本国籍の場合

被相続人が日本に住所を所有している場合には、国内・国外全ての財産に相続税が課税されます。
もし、被相続人の所有している財産が相続税の無い国にある場合でも、日本人の配偶者はその財産に関して相続税を払う必要があります。

被相続人、配偶者ともに日本国籍ではなく、被相続人は外国で亡くなり、被相続人が亡くなった時に配偶者が日本に住所を所有していた場合には、すべての財産が相続税の課税対象となります。

まとめ

相続税法上の国籍の扱いについては、日本国籍を取得しており、他の国の国籍も取得している重国籍の場合には原則として日本国籍のみを取得している人と同じ扱いとなります。
そのため、重国籍であっても相続開始時の住所地がどうなっているかによって相続税の課税財産の範囲が決められています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。